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栃木刑務所内のドア、2019年1月31日. © 2019 Yo Nagaya
  • 日本の刑法には、社会奉仕活動などの拘禁に代わる代替刑は存在しないため、日本の裁判官は非拘禁刑を選択する権限が限定されている。
  • 多くの女性は一度収監されると、妊娠中の拘束具の使用、メンタルヘルスケアを含む医療への不十分なアクセス、恣意的な独居拘禁、そして刑務官による暴言などの人権侵害に遭う。
  • 日本政府は、刑務所内の状況を改善すると共に、薬物の単純所持及び使用の非犯罪化や拘禁に代わる代替刑を導入すべきだ。収監は最終手段であるべき。

(東京)-日本で収監された多くの女性が、深刻な人権侵害や不当な取扱いの被害に遭っていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日公開した報告書で述べた。日本政府は早急に、刑務所内の環境の改善、薬物の単純所持及び使用の非犯罪化、そして拘禁に代わる代替刑の導入などの改革に取り組むべきだ。

報告書「人として扱われていない」(全76項)は、日本の女性刑務所での人権侵害を記録した調査報告書。日本政府の女性受刑者に対する政策は、国際人権条約に違反しており、国連被拘禁者処遇最低基準規則(マンデラルールズ)を含む国際基準にも反している。刑務所では、妊娠中の受刑者への拘束具の使用、独居拘禁の恣意的使用、受刑者に対する暴言、受刑者の子どもを刑務所内で養育する機会の拒否、そして医療やメンタルヘルスケアへの不十分なアクセスなどの問題がある。

また、日本政府は多くの女性を薬物の単純所持及び使用で収監しており、エビデンスに基づいた効果的な物質使用症の治療へのアクセスも確保していない。また、日本の刑法には、社会奉仕活動などの拘禁に代わる代替刑は存在しないので、日本の裁判官は万引きなどの犯罪に対しても非拘禁刑を選択する権限が限定されている。

「女性刑務所の環境改善が早急に必要なのは間違いないが、そもそも収監されるべきではない女性が多く収監されているという問題もある」とヒューマン・ライツ・ウォッチ アジア局プログラムオフィサーの笠井哲平は述べた。「日本政府は刑罰として拘禁を多用するのではなく、拘禁への代替刑の導入を検討するとともに、薬物の単純所持及び使用については非犯罪化に向けて動くべきだ。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、2017年1月から2023年1月の間に、数十名の元受刑者や専門家を含む約70名をインタビューした。

日本の刑事訴訟法第482条は、受刑者の年齢、健康状態や家族の事情などを理由に、検察官に刑の執行停止を言い渡す権限を与えている。しかし、ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査で、検察官は同条をほぼ活用していないことが分かった。実際に過去5年間で刑を執行停止されていた女性受刑者は、11名にすぎなかった。

多くの女性は収監されると、刑務所内で深刻な人権侵害の被害に遭う。例えば、トランスジェンダー受刑者に対する虐待、医療など他基本的な社会福祉サービスへの不十分なアクセス、女性受刑者と子どもの分離、そして刑務所内外でのコミュニケーションに対する過度な制限などがある。

日本政府は、市民的及び政治的権利に関する国際規約や拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約など、刑事司法や受刑者の処遇に関するコアな国際人権規約を批准している。また、マンデラルールズに加えて、本件に関する国際基準は非拘禁措置に関する国連最低基準規則(東京ルールズ)や女性被拘禁者の処遇及び女性犯罪者の非拘禁措置に関する国連規則(バンコクルールズ)がある。日本の現在の刑事司法制度や刑務所における慣習は、こうした規約の条文に違反しており、国際的なルールや基準に反していると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「現状では深刻な人権侵害につながる刑務所への収監は、最終手段であるべきだ」と笠井は述べた。「日本政府は、人権尊重に基づいたアプローチに必要な改革を実施するべきだ。そうすることで、女性たちの人権を保護するために女性刑務所の収容人数を減らすべきだ。」

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